【完全保存版】プロが教える!自賠責保険の受取金額に関する全知識!
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自賠責保険とは自賠責保険法により加入が義務付けられている保険制度です。自賠責保険に加入しないと行政上の処罰対象になり、免許停止や罰金刑が科せられます。
自賠責保険は法律で補償額が定められているため、自動車保険にあまり詳しくない人でも、簡単に計算できるというメリットがあります。
自賠責保険は人身補償に限られていて、死亡、後遺障害、ケガにより被害を被った場合に補償が適用されます。車の修理費までは補償してくれないので注意しましょう。
自賠責保険の限度額 | |
---|---|
被害者の傷害 | 120万円 |
被害者の後遺障害 | 4,000万円 |
被害者の死亡 | 3,000万円 |
交通事故に遭ってしまった場合、人身部分については自賠責保険で先に補償が提供され、自賠責保険の補償額を超える部分は任意保険による補償になります。
任意保険は必須ですし、すでに加入している場合にも現在の補償範囲が適切かチェックし、保険料と補償のバランスがよい保険を見つけることが大切です。
今の保険料でより充実した補償プランにすることも可能ですので、自動車保険一括見積もりで試算を出してみることをおすすめします。
自賠責保険の概要
自賠責保険は自動車やオートバイ、原付を所有する人が必ず加入する必要がある強制保険です。
自賠責保険に加入せず公道を走行した場合、行政処分が科せられます。自賠責保険法では懲役1年以下もしくは50万円以下の罰金と定められています。自賠責保険は交通事故の被害者の人的被害を補償する保険です。
自賠責保険の保険料は排気量により異なります。加入期間は最低1年ですが、次回の車検満了月まで加入する必要があります。自賠責保険の補償額はあらかじめ定められています。
補償額は交通事故の被害者一人当たりの補償額で、複数の被害者がいる場合には、それぞれ自賠責保険の補償額の範囲で保険金が支払われます。
自賠責保険は強制保険で法律によって加入は義務付けられている
自賠責保険は任意保険とは異なり、加入意思がなくても加入が義務付けられている強制保険です。そのため加入しない場合にはそれが故意であれ過失であれ行政処分対象になります。
罰金もしくは懲役刑に加えて免許停止などの重い処分が科せられます。自賠責保険に加入していない場合、もしくは補償期間を過ぎてしまった場合、自賠責保険未加入になり、車検を通すことができません。
自賠責保険の加入期間中に車を手放した場合、補償の残存期間に応じて保険料が返還されます。自賠責保険はどの保険会社を通じて契約したとしても補償の効力は変わりません。
例えばA社で自賠責保険に加入し、B社の任意保険に加入した場合でも、自賠責保険は任意保険取り扱い損保にかかわりなく補償されます。
自賠責保険は対人限定!被害者を救済するのが目的
自賠責保険が導入された背景には、交通事故による死者が増加し、補償が社会問題化したことが関係しています。そのため、自賠責保険は不幸にも交通事故の被害に遭ってしまった人に対して治療費や慰謝料、葬儀費用などを補償する保険として設立されました。
自賠責保険は人的被害に補償が絞られています。人身事故ではケガや後遺障害などの被害を被った場合、自賠責保険で補償されます。交通事故で車が破損してしまった場合でも、自賠責保険からの物損補償の提供はありません。
自賠責保険の補償額はあらかじめ上限が定められていて、補償額を超える部分については自賠責保険からの補償はありません。
自賠責保険の保険金は規定のある範囲で支払われる
交通事故により被害者がケガや後遺障害を負ったり、死亡に至ったりする場合、自動車損害賠償保障法の規定に従って相当の補償額が支払われることになっています。
自動車損害賠償責任保険の保険金等の支払は、自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)第2条並びに別表第1及び別表第2に定める保険金額を限度としてこの基準によるものとする。
補償額はあらかじめ定められていますが、自賠責保険の補償額基準のことを保険用語で自賠責基準と呼びます。
正しくは自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準という名称が定められています。
この支払基準によると、補償は主に3つの分野に分かれています。
- 傷害による損害
- 後遺障害による損害
- 死亡による損害
それぞれ治療費や慰謝料などの補償が含まれていますが、後遺障害については、障害等級に従って相当の補償額が支払われることが決められています。
自賠責保険の補償内容と受取金額一覧
自賠責保険の補償内容は次の通りです。
・ケガによる損害
・後遺障害による損害
・死亡による損害
ケガによる損害には応急手当に必要な費用、診察や入院にかかった費用、通院や看護費用が含まれます。そのほかに診断書料や休業補償が含まれます。精神的な苦痛を負った場合の慰謝料も支払われます。
後遺障害による損害の場合、治療費や入院費にくわえて、障害等級に従って相当の補償額が支払われます。これには逸失利益や慰謝料も含まれます。死亡による損害は葬儀費用、被害者の逸失利益、慰謝料が支払われることになっています。
死亡・後遺障害・傷害の3つのタイプに分類
自賠責保険は自動車損害賠償保障法施行令に従って補償されます。自動車損害賠償保障法施行令とは政令によって定められるという点を覚えておきましょう。政令とは内閣が一定の手順に従って発する命令のことです。
法律は国会で議論され議院の賛成に基づいて施行されますが、政令は閣議決定に基づいて発せられます。つまり自賠責保険の補償額は内閣の判断次第で変更できるということです。
基本的に国民主権という観点から、国民の福祉を最優先にして補償額も決まります。また自賠責保険の補償は以下3つに分類されます。
自賠責保険の補償額は政令により傷害が最高120万円、後遺障害が最高4000万円、死亡が最高3000万円と定められています。(参照:損害保険料率算出機構「自賠責保険(共済)損害調査のしくみ」)
1.死亡による損害
不幸にも交通事故の被害者が死亡した場合、自賠責保険から死亡補償が提供されます。自賠責保険の死亡補償は慰謝料、逸失利益、慰謝料で構成されています。
慰謝料には葬儀費用、埋葬費用、墓石などの購入費用が、逸失利益は被害者が生存していた場合に得られたであろう生涯収入をもとに死亡保険金を算定します。慰謝料は精神的な慰謝料が遺族に対して支払われます。
支払の対象となる損害
自賠責保険の死亡補償の支払い対象となるのは、交通事故の被害者が死亡した場合です。交通事故の被害者が複数人におよび、それぞれが死亡に至った場合は、それぞれに対して死亡保障が適用されます。被害者がケガや後遺障害を負い、その後死亡した場合についても同様です。
具体的な事例としては、歩行中に自動車が歩道に突っ込み、歩行者をはねて死亡させてしまった、交差点で走行中の自転車を巻き込み、自転車の運転者を死亡させてしまったといったケースが当てはまります。
出会いがしらの衝突などで死亡した場合も同様です。基本的に任意保険のような過失割合はありませんが、重大な過失があると判断される場合には補償額が減額される場合があります。
葬儀費
自賠責保険の死亡補償には葬儀費用が含まれます。葬儀費用には被害者の葬儀に関わる費用が支払われることになっています。具体的には通夜、埋葬に関わる費用、墓石の購入が含まれます。
ただし参列者への香典返しや墓地の購入費用は対象外になります。墓地の購入費用は補償されませんが、逸失利益に基づく死亡保険金や慰謝料が支払われるため、そこから賄うことができます。
葬儀日には支払い基準が定められています。支払い基準は一律60万円までとされていますが、葬儀費用が合計60万円を上回った場合、出費を証明する領収書や見積書を提出することで最大100万円まで補償されます。
出費を証明する資料がない場合、補償されない場合もあるので注意が必要です。
逸失利益
自賠責保険の死亡補償は逸失利益が加算されます。逸失利益とは被害者が生存していれば得られたであろう生涯収入のことを指します。
逸失利益を計算する場合、生活費は差し引かれます。また年金収入も加算対象にはなりません。逸失利益を計算する際、ライプニッツ係数と呼ばれる利率が乗ぜられます。
逸失利益は被害者の職業や年齢によって異なります。そのため葬儀費用や慰謝料のように支払い基準があらかじめ定められてはいません。ただし葬儀費用や慰謝料、逸失利益を含めた補償額の上限は最大3000万円までと定められています。これを超える分については自賠責保険では補償されません。
逸失利益とは?
自賠責保険で死亡補償を算定する場合、算定基準となるのが逸失利益の計算です。自賠責保険では死亡補償が上限3000万円と定められていますが、これは必ずしも3000万円支払われるというわけではありません。
逸失利益とは不幸にも死亡した被害者が生存していたら得られたであろう生涯収入のことを指します。
基本的には死亡した本人の年収に生きていたであろう年数をかけ合わせます。逸失利益を算定する際、個人消費は利益には含まれません。
さらに年金も逸失利益には含まれないため、生涯収入とは労働により得られたと考えられる総収入を指します。逸失利益は死亡した人の職業や学位、年齢などによって変化します。
逸失利益を計算する「ライプニッツ係数」とは?
自賠責保険の死亡補償は逸失利益に基づいて算定します。逸失利益を計算する際にカギとなるのがライプニッツ係数です。逸失利益の計算では死亡した被害者が生存していたと仮定した場合に得られたであろう生涯収入を算定する必要があります。
ここで問題になるのが死亡保険金の受取です。死亡保険金は保険会社から一括で支払われます。一括で支払われる際に弊害が生じるのです。それはなぜでしょうか。
保険金が一括で支払われた場合、もしかしたら保険金を資産運用したいと思うかもしれません。そうすると、本来得られたはずの生涯収入を上回る収入を得られることになります。
例えば3000万円を満額受け取れた場合、3000万円を10年間資産運用した場合、場合によっては数十万円もの利益が生まれることもあります。
より正確に生涯収入を算定するには、このような「運用」により得られる増収分を控除する必要があります。控除分を計算する際に用いられるのが「ライプニッツ係数」なのです。
逸失利益の計算方式と事例
自賠責保険の算定後方に従って逸失利益を計算してみましょう。逸失利益を計算する際に用いられる計算式は次の通りです。
逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
このうち、基礎収入とは死亡した被害者が死亡時に得ていた報酬を指します。労働能力喪失率とは労働に関われる割合を指します。被害者が死亡している場合、労働はできないため喪失率は100%という計算になります。
次にライプニッツ係数ですが、ライプニッツ係数は労働能力を喪失したとみなされる期間、つまり死亡した日から定年までの期間に基づいてその値が決まります。
<計算例>
- 30歳の男性(会社員)
- 年収500万円生活費控除割合30%
- 500万円×(1-0.3)×16.711=58,488,500円
ライプニッツ係数はあらかじめ数値が定まっていることから、計算式に従って、死亡した被害者の年齢に基づく係数をかけ合わせることで逸失利益が計算できます。
慰謝料
交通事故で被害者が不幸にも死亡した場合、葬儀日や逸失利益のほかに精神的な苦痛に対する慰謝料を請求できます。
自賠責保険では慰謝料請求が認められていて、自賠責保険法に基づき、政令に従って補償額が定められています。自賠責保険はあらかじめ補償額が決められていることから、保険に詳しくなくても目安を計算しやすくなっています。
自賠責保険で補償される死亡時の慰謝料には被害者本人に対するものと、被害者の家族に対して支払われる慰謝料に分かれます。
被害者本人に対しては補償額が一律で350万円、家族に対しては遺族の人数により補償額が変わります。
- 1人の場合は550万円
- 2人の場合は650万円
- 3人の場合は750万円
このように補償額が変動します。
傷害損害
被害者が交通事故で傷害を負い、その後死亡に至った場合、自賠責保険からは死亡補償のほかに傷害損害に対する補償が提供されます。
傷害損害は自賠責保険の傷害補償に準ずるものとなっています。傷害補償では最大120万円を限度に補償されます。傷害補償の対象になるのは、治療関係費や文書料、また休業補償や慰謝料です。
治療関係費とはケガの治療のために通院や入院、手術を行った費用、通院のために支払った交通費、診断書作成料などが含まれます。
通院および入院の場合、治療費や入院費の実費分が補償されます。加えて看護料なども支払われます。死亡するまでの間にある程度の期間がかかった場合は、その間の休業補償が支払われることになっています。
2.後遺障害による損害
交通事故で被害者が傷害を負い、後遺障害になってしまった場合、障害の度合いに応じて自賠責保険から保険金が支払われます。
後遺障害については常時介護をする状態になってしまった場合、最大4000万円、それ以外の後遺障害では最高3000万円を限度に後遺障害が補償されます。
後遺障害には死亡時と同様逸失利益と慰謝料を算定し、合算した額が保険金として被害者に支払われることになっています。
後遺症による遺失利益
後遺障害を負ってしまった場合、最悪の場合、仕事や家事ができなくなってしまうことがあります。その場合、生活の保障が必要になることから、自賠責保険では逸失利益を計算することで後遺障害の保険金を算定することになっています。
計算方法は次の通りです。
障害認定された時点での基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
労働能力喪失率とは、後遺障害により労働に支障が出る割合を指します。労働能力喪失率は障害等級により割合があらかじめ定められていて、喪失率が100%と判断されるのは1等級~3等級までの範囲です。
補償金額は常時介護が必要で障害が一定基準を満たしている場合で最高4000万円、それ以外の場合では最高3000万円です。
後遺症による慰謝料
後遺障害を負ってしまった場合、自賠責保険から精神的苦痛に対する慰謝料が支払われます。精神的苦痛に対する慰謝料の金額はあらかじめ政令で定められています。
ちなみに自賠責保険で支払われる慰謝料は常時介護状態および第一級障害の場合で1600万円、それ以外の場合、第一級障害が最大1100万円です。
後遺障害における慰謝料の算定方法は障害等級に基づいて支払額が定められているため、障害認定された時点で慰謝料の金額が決まることになっています。
後遺障害になってしまった被害者に被扶養者がいる場合、慰謝料の額は被扶養者の人数により増額されることになっています。
後遺症による慰謝料は国土交通省が定める「等級」に応じて支払われる
自賠責保険で補償される後遺障害については、あらかじめ定められた障害等級に基づき、補償額が決まります。
障害等級は自賠責保険を監督する国土交通省が定めた基準に従って第三者機関である損害保険料算出機構が判断し等級認定を行います。等級認定されると等級ごとに定められた慰謝料が被害者に対して支払われます。
等級は常時介護を必要とするものと、そうでないものとに分けられています。常時介護を必要とする状態については第一級と第二級の二段階、それ以外については第一級から第十四級まで設けられています。(参照:国土交通省「後遺障害等級」)
障害等級の最も軽い第十四級は慰謝料が75万円です。
3.傷害による損害
交通事故でケガをした場合、被害者には自賠責保険から保険金が支払われます。傷害による損害は主に次の4つの分野に分かれています。
- 治療関係費
- 文書代(交通事故証明費用など)
- 休業補償
- 慰謝料
傷害による損害では上記の4つの分野の補償額を合算し最高120万円まで補償されます。
治療費
自賠責保険で補償される治療費には交通事故でケガをした場合に治療にかかったすべての費用が補償対象になります。
具体的には診察代、手術を行った場合の手術費用、痛み止めなどの処方を行った場合の処方料、入院した場合の入院費が含まれます。これらの費用は交通事故による傷害と認められる場合、補償の対象になります。
治療費は基本的に実費払いとなりますが、自賠責保険から治療費が支払われることになるため、立て替え払い分が戻ってきます。
ただしこれらの賠償費用は加害者が支払うべきものであるため、加害者側が立て替えることになります。任意保険に加入している場合は保険会社が立て替え払いを行います。
入通院慰謝料の計算式と具体例
交通事故で傷害を負いケガの治療のために入通院した場合、自賠責保険から入通院に関わる慰謝料が支払われます。
自賠責保険はあらかじめ入通院に関わる慰謝料の日額が定められています。慰謝料の日額は4200円です。そのため実際に入通院した日数に慰謝料の日額をかけ合わせることで慰謝料を算定できるようになっています。
入通院慰謝料の計算式は2通りあり、それぞれ計算した値のうち少ないほうの額が慰謝料になります。入通院慰謝料の計算式は次の通りです。
- 入通院にかかった期間×4200円
- 実入通院日数(入院日数+通院日数)×2×4200円
どちらか値の少ないほうが採用されます。具体的な計算例を考えてみましょう。
事例
4月1日に交通事故で傷害を負い、4月25日まで通院した場合(治療期間25日、実際に通院した日数は15日)を計算します。
- 治療にかかった期間=25日×4200=105000円
- 実通院日数=15×2×4200=126000円
- 治療にかかった期間<実通院日数×2
上記の場合、105000円が入通院慰謝料として支払われます。
この場合、治療にかかった期間が実通院日数よりも少ないですが、治療にかかった期間が30日を超えた場合、実通院日数が治療にかかった期間より少なくなると慰謝料は増えます。
看護料
自賠責保険で補償される看護料とはお子さんが12歳以下で医師が看護を必要と認めた場合に看護費用として支払われる補償のことを指します。
具体的にはお子さんが交通事故でケガをしてしまい入院期間中に近親者もしくは看護士が付き添いをした場合、看護料が支払われます。
看護料は入院の場合、日額4100円、自宅看護もしくは通院での看護が必要な場合、入院看護の半額の2050円が支払われます。
ただしお子さんの付き添いにより、近親者が仕事に従事できず経済的な損失を被った場合、日額19000円を上限に看護料が支払われます。
このことを認めてもらうためには、収入減を証明する書類(看護前と看護後の源泉徴収票や給与明細書)が求められます。
諸雑費
諸雑費とは入院中に必要とされる物品の購入に対して支払われる補償を指します。交通事故によるケガで入院する場合、何かと必要なものを購入することになるでしょう。替えの下着や寝間着などをすべて新たに購入する必要もあります。
入院中に購入が必要になった物品に対して、治療関係費の他の項目で補償されないものについては諸雑費として換算し補償を受け取ることができます。
諸雑費は1日当たり一律1100円が支払われることになっており、これを超える場合でも補償額が増額されることはありません。
例えばケガの治療で20日間入院することになった場合、20×1100円=22000円が諸雑費として支払われます。
通院交通費
通院交通費とは交通事故でケガを負い、治療のために病院などに通う際に発生した交通費を補償するものです。これには病院まで通院するために使用した公共交通機関、タクシー代などが含まれます。
支払われるのは必要かつ妥当な額と定められているため、道理にかなった範囲内での出費に対して補償されます。
補償金額に上限は設定されていませんが、タクシーや新幹線などを利用した場合には、領収書の添付が求められます。
遠方まで通院する場合の事例として、交通事故で診察を受けた病院で引き続き診察を受けることを希望する場合が当てはまります。ただし妥当な範囲という決まりごとがあるため、宿泊費などが発生する場合は対象外です。
義肢等の費用
義肢等の費用とは交通事故による傷害により、骨折や失明などで松葉杖の使用や義眼を入れることになった場合などの費用を補償するものです。ケガにより義歯を入れることになった場合にも補償の対象になります。
補償の対象になるかどうかについての判断基準となるのは、交通事故の傷害により義肢などが必要になった場合です。交通事故との因果関係が補償対象かどうかを決めるものになるため、交通事故によるケガに伴うものであれば補償対象です。
補償額の上限は基本的に定められていませんが、眼鏡を作成した場合に限り、最大50000円までの上限が定められています。その他の義肢や義眼などは領収書の添付により実費が補償対象になります。
診断書等の費用
診断書等の費用とは交通事故によるケガの治療を行い、医師から診断書を発行してもらう必要が生じた場合の診断書作成費用などを補償する項目です。診断書の発行手数料は病院やクリニックにより異なります。
費用の上限は定められていませんが、妥当な金額という言葉で表現されているため、社会通念上一般的と認められる枚数に限られます。
診断書費用が支払われる条件とは、診断書の作成を依頼し、作成にかかった費用が発生した場合、診断書料の領収書などを提出することが必要です。
民間の医療保険に加入していて、医療保険の請求に診断書が必要な場合、診断書を作成することがありますが、その場合の費用も自賠責保険で補償されます。
文書料
文書料とは交通事故により関係する省庁や保険会社に提出する書類が必要になった場合の費用を補償するものです。具体的には交通事故証明書や住民票などの公的な書類がそれにあたります。
文書料が支払われるかどうかの判断基準は交通事故により公的書類を取得する必要が生じた場合に限られます。それ以外の個人的な用途に対しては補償対象にはならないため、どのような目的で使用するかを明確にしなければなりません。
補償金額に上限は定められていませんが、妥当かつ必要な実費が上限と定められていることから、必要と判断される発行枚数に対してかかった費用のみが補償対象になります。
休業損害
休業補償とは交通事故により傷害を負い、仕事を休まざるを得なくなった場合の補償を指します。主婦のように実際の仕事に就いていない場合でも、家事従事者であれば休業補償の支払い対象になります。
休業補償が適用されるかどうかを判断する基準は、交通事故のケガの治療やリハビリのために、仕事や家事を休まざるを得なくなったかどうかという点です。明確な理由があれば、休業補償が認められます。
休業補償の補償金額は基本額が日額5700円と定められています。ただし1日当たりの報酬が5700円を超える場合、源泉徴収票や給与明細を提出し給料が減少したことが認められれば、19000円を限度に補償されます。
慰謝料
傷害による慰謝料とは交通事故によりケガをしてしまい、精神的、肉体的な苦痛を受けた場合にそれに対して支払われる経済的な対価を指します。精神的な苦痛は目に見えないため、慰謝料という形で埋め合わせを行います。
慰謝料は交通事故の被害者に対して必ず支払われます。ただし自賠責保険ではあらかじめ補償額が定められているため、補償額を上回る慰謝料を請求することは法律上できません。
精神的、肉体的苦痛に対する慰謝料の日額は自賠責保険の場合4200円です。慰謝料の計算は治療開始から完治までの期間もしくは実際に通院した日数を2倍したものとを比較し、少ない日数が慰謝料算定日数になります。
自賠責保険の慰謝料請求は診断書記載方法で損をする
自賠責保険の慰謝料請求を行う場合に気を付けたいのが、診断書の治療最終日です。自賠責保険の慰謝料請求を計算する方法は次の2つでどちらか値の少ないほうが算定日数になります。
- 実際に通院した日数×2
- 通院にかかった期間
慰謝料計算では通院にかかった期間が実際の通院日数の2倍よりも多い場合、受け取れる慰謝料の金額が多くなります。仮に診断書で通院期間が少なく記載されてしまった場合、受け取れる慰謝料が減額され損をしてしまいます。
診断書を作成してもらう際には、医師と事前に相談し、通院期間と実際の通院日数をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
自賠責保険は減額される場合がある
自賠責保険は交通事故の被害者を保護することが主な目的で設立された強制保険です。そのため自賠責保険は任意保険とは性質が異なり、あらかじめ補償額が定められているだけでなく、基本的に被害者に対して補償額の上限をめどに全額が支払われます。
このことは被害者側にある程度の過失がある場合でも同様のことが言えます。任意保険では過失割合により過失相殺が生じ、補償額が少なくなりますが、自賠責保険には過失相殺という決まりがありません。
ただし中には被害者側に重大な過失があるケースもあります。例えば被害者が故意に信号を無視して交差点に進入した、麻薬などを使用していて意識が錯乱していたため道路に飛び出してきたといった場合です。このようなケースでは減額されることがあります。
被害者に重大な過失があった場合
自賠責保険は任意保険とは異なり過失割合という概念が基本的にはありません。ただし交通事故において被害者側に重大な過失があると判断された場合はその限りではありません。
判断基準となるのが被害者側の重大な過失の有無です。重大な過失とはどのようなケースを指すのでしょうか。
一般的に重大な過失とみなされるケースとは、被害者側の信号無視、一方通行違反、一時停止違反などです。
つまり基本的な交通ルールを無視して交通事故に巻き込まれた場合には、被害者側にも重大な過失があると判断され、自賠責保険による補償額が減額される場合があります。歩行者も、自動車の運転者も慎重な行動が必要です。
受傷と死亡または後遺障害との因果関係の判断が困難
自賠責保険ではケガによる損害のほかに、後遺障害や死亡による損害も補償対象になります。
後遺障害や死亡による損害に対して補償が提供されるのは、交通事故に起因するケガなどにより相当の事態に至った場合に限られます。これはどのような意味でしょうか。
交通事故の傷害が原因で後遺障害になったり、死亡してしまったりすることはありますが、医師による診断の結果、交通事故による傷害と後遺障害や死亡に至る経緯に因果関係がみられない場合、傷害に対する補償は適用されるものの、後遺障害や死亡補償は提供されません。医師による判断が決定を左右するのです。
保険金が支払われないケースもある?
自賠責保険は交通事故被害者の経済的な出費を賄うために設立された強制保険です。
自賠責保険は任意保険と比較すると、補償対象になる基準が低いため、保険金が支払われる可能性が高い損害保険ですが、状況により自賠責保険の補償が受けられないことがあります。
自賠責保険の補償が受けられないケースとは、被害者側に重大かつ過失割合が10割である場合や重大な法令違反が関係している場合などです。
具体的には高速道路に故意に侵入し走行中の自動車にはねられてしまった場合などが当てはまります。被害者側が故意に起こした事故についても同様です。これにより保険金詐欺を防ぐことができます。
100%被害者の責任で発生した無責事故は自賠責保険金の対象外
自賠責保険は過失相殺による補償額の減額が任意保険のように厳密に適用されることはありませんが、被害者側の過失割合によっては、補償額が減額対象になる場合があります。
基本的に自賠責保険で補償が減額されるのは被害者の過失割合が7割を超える場合です。過失割合が10割になると、被害者側に対する補償はありません。
過失割合が10割とされるのが無責事故です。無責事故には信号無視や追突事故などがあります。被害者側が故意に信号を無視した場合などは無責事故と判断され、自賠責保険からの補償はなくなります。
無責事故の三大要因
被害者側の過失が100パーセントと判断される無責事故は自賠責保険による補償対象とはなりません。
無責事故と判断された場合、相手側からの補償は期待することができず、治療費を含め交通事故による損害はすべて自分で賄う必要があります。
無責事故の三大要因とは次の通りです。
- 信号無視で発生した交通事故
- 追い越し禁止車線でセンターラインをオーバーし衝突した場合
- 追突事故
上記の三大要因のうち、交通弱者が起こすケースとしては1の信号無視が挙げられます。自転車で信号を無視して交差点に進入し自動車と衝突した場合などが考えられます。信号無視が故意であれば間違いなく無責事故と認定されます。
スピードの出し過ぎによる衝突事故
道路交通法では、各道路における最高速度が定められている場合、最高速度を超えて運転するものに対する罰則があります。自賠責保険ではスピードを違反した場合、補償の減額、もしくは無責事故として扱われるケースがあります。
スピードの出しすぎと判断されるかどうかは、事故当時の状況によるでしょう。最高速度を数十キロも上回る速度で走行していて衝突事故に巻き込まれた場合は、無責事故として扱われる可能性が高いです。
スピードの出しすぎはたとえ相手側の衝突事故であったとしても、被害者に過失がある時点で過失割合が設定されます。過失割合が7割を超えると、補償額が減額されることになるので、速度法規は順守することが大切です。
信号無視による衝突事故
自賠責保険で補償が適用されない顕著なケースが信号無視による事故です。赤信号であることが明白であるにも関わらず交差点に進入して事故に巻き込まれた場合、無責事故扱いとなるため、自賠責保険からは補償されません。
無責事故は交通弱者に対しても適用されます。例えば歩行者や自転車の運転者が故意に赤信号を無視して道路を横断し、走行中の自動車と衝突した場合、過失割合が設定されます。交通事故時の状況も加味されますが、故意に侵入した場合は過失割合が高くなります。
信号無視は重大な法規違反です。信号無視による違反点数と罰則金を考えると、信号無視は危険な行為であることが分かります。信号を無視することで、青信号で進入してきた車の運転者にも影響が及ぶことを考えると絶対にしてはいけない行為です。
脇見運転や居眠り運転による衝突事故
無責事故としてカウントされる可能性があるのが脇見運転や居眠り運転です。綺麗な光景に見とれていて、ハンドル操作を誤り衝突してしまった場合、過失割合は高くなります。
自賠責保険の場合、7割以上の過失割合が適用されると補償額が減額されるので注意が必要です。
居眠り運転は非常に危険な行為です。居眠り運転をしていて、渋滞中の車列に突っ込み多数の死傷者を出してしまったといった事故が相次いで発生しています。居眠り運転により追突した場合は100%無責事故です。
脇見運転や居眠り運転で過失割合を決定する際には、事故当時の状況調査が必要になります。
過失割合が10割にならない場合もありますが、いずれにしても過失割合は非常に高くなるため、補償を満額期待することはできません。
自賠責保険と任意保険の関係性と兼ね合い
自賠責保険とは別に任意保険に加入する必要性があるのはなぜでしょうか。自賠責保険は対人補償だけに限られていることに加えて、補償額に上限があります。
仮に交通事故の倍書額が補償額を超えてしまった場合、超過分は他の手段で補償しなければいけません。
任意保険は自賠責保険をカバーする手段と考えたほうが良いでしょう。自賠責保険はすべて加害者が立て替え払いすることが基本です。
任意保険に加入していなければ、多額の費用を自分で支払うことになります。ですから自賠責保険と任意保険はセットで考えたほうが良いのです。
基本は任意保険によって補償される
自賠責保険は任意保険とは異なり、交通事故の加害者が被害者に対して補償を先に支払ったのち、自賠責保険側に加害者が請求するという形をとります。つまり一定額を自分で賄わなければいけません。
任意保険に加入するメリットとして、自賠責保険の立て替え払い部分を保険会社が代わりに支払ってくれるということがあります。自賠責保険から補償が支払われる場合でも、お金を支払わずに済むのはそのためです。
高額な補償を自分の資産で行うというのはよほどの資産家でない限り難しいといえるでしょう。経済的な負担をカバーしてくれるのが任意保険の役割なのです。
自賠責保険の保険金額の推移
自賠責保険の保険料は政令によって定められることになっています。これは政府が自賠責保険の積立準備高と保険金支出とを比較し、保険料を決めることを意味しています。
自賠責保険の保険料は支出が多ければその分だけ高くなりますし、少なければ安くなります。ここ10年来の推移を見てみると、平成19年度の時点では自賠責保険の保険料は24カ月で30830円でした。
それが翌年以降保険料が改訂され、平成20年から22年度にかけて保険料が減額され、24カ月の保険料は22470円まで引き下げられました。
人口の減少と若者車離れに伴い、保険料は平成23年度以降上昇傾向にあります。平成23年度以降は24950円でしたが、平成26年度には27840円まで上昇しました。
死亡の支払保険金額の推移
自賠責保険による死亡による損害の補償額は物価の上昇とともに変化してきました。過去から現在までの推移を見てみると、死亡補償がどのような経緯をたどってきたのかを理解できるでしょう。
自賠責保険の制度が始まった1956年当時は死亡による損害の補償額は30万円でした。当時の物価から計算するとこれが妥当な補償額だったのです。それから高度経済成長を経て、保険金支払額は上昇の一途をたどります。
1975年当時の補償額は最高1500万円でしたが、それから10年後の1985年には2500万円、そして2018年現在までの補償額は3000万円まで引き上げられました。
後遺障害の支払保険金額の推移
自賠責保険による後遺障害の補償額は年間所得の変化とともに保険金支払額が変化しています。制度開始の1956年当時、後遺障害による損害の補償額は5万円~100万円でした。
1960年代後半、高度経済成長期になると保険金支払額は膨張し1969年時点では19万円~500万円まで補償額が増額されました。
オイルショックが起きた1973年になると補償額の最高額は1000万円の大台に達し、2018年現在では補償額が最大4000万円にまで引き上げられています。後遺障害については障害等級により支給される金額が変化しますが、時代の流れに合わせた必要補償額が設定されています。
傷害の支払保険金額の推移
傷害による損害についての支払い保険金額を見てみると、1956年の自賠責保険スタート時、補償額は最大10万円でした。この当時の補償額はケガの程度により重症もしくは軽症に分類され、軽症の場合は3万円が上限でした。
1970年代になると補償額は80万円まで引き上げられ、1978年には現行と同じ120万円がケガによる損害の補償額の上限に設定されました。
ケガによる損害については30年にわたって変更されていません。その理由として任意保険の加入が促進されたことや医療保険による保険金の支払いが増えたことなどが関係しています。
交通事故後は任意保険の見直しを
任意保険にはノンフリート等級制度というものがあります。事故歴に応じて保険料を割引、割増する制度です。
1等級~20等級があり、初めての契約時には6等級からスタート、一年間無事故であれば等級が1つあがり、7等級となります。等級があがるほど割引率が高くなります。反対に、交通事故を起こすと等級は下げられます。
被害者であれ加害者であれ、事故のタイプによって等級の下がりが違います。1度の事故で3等級ダウンするものから、事故になっても等級が下がらないものまであります。
- 3等級ダウン事故⇒他人をケガさせて対人賠償保険金を使った/他人の車を壊して対物賠償保険金を使った場合など
- 1等級ダウン事故⇒盗難に遭って車両保険を使った場合など
- ノーカウント事故⇒人身傷害補償保険のみを使った場合など
20等級ともなれば保険料の割引率は63%、反対に度重ねて交通事故を起こして1等級になってしまえば64%の割増です。
等級は保険会社に関係なくずっと記録されているものなので、その等級自体をリセットする方法はありません。これでは何年もの間、無事故のまま等級がアップするまで、しばらくは高い保険料を支払い続けるしかありません。
しかし、保険会社を変えることで保険料を安くすることなら可能です。たとえ割引率が低くなっても(割増になっても)、保険料全体をおさえることのできる保険会社を選べば無駄な支払いをせずに済みます。
交通事故後、または万が一の交通事故に備えて保険会社を見直してみてはいかがでしょうか。
まとめ
自賠責保険は法律により定められた強制保険です。自賠責保険に加入していない場合、それが故意であれ過失であれ処罰対象になります。その理由は自賠責保険が交通事故の被害者を保護する目的で設けられた制度だからです。
自賠責保険があるおかげで交通事故に巻き込まれてしまった場合の補償が得られるようになりました。
自賠責保険は任意保険とは異なり、補償額があらかじめ定められています。このことは保険についてあまり詳しくない人でも、自賠責保険の補償額が計算しやすいことを意味しています。
自賠責保険の補償額を計算できれば、どれくらいの慰謝料を受け取れるのか、保険金はいくらくらい入るのかといったことがわかるため、その後の生活設計を立てやすくなります。
自賠責保険はその特性上、過失割合が設定されるハードルが低くなっています。それでも被害者側に重大な過失がある場合、過失割合が設定され、補償額が減額されたり、補償が適用されなかったりすることがあります。
このことを考えると日ごろから交通安全に注意を払うだけでなく、任意保険にも加入して万全の補償を設定しておくことが大切だということがわかるでしょう。