【民法改正】法定利率が3%に引き下げ!賠償額の逸失利益金額が大幅UP
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交通事故を起こしてしまうと、時として後遺症が残ってしまうことがありますし、そのせいで収入が減ってしまうことがあります。
この時に受け取ることができるのが、逸失利益という利益なのですが、いくらもらえるのかという点は、その人の職業や年齢などによっていろいろな難しい計算を行わなければいけません。
その中には民法で決められている法定利率も大きく関係してくるわけですが、民法が改正されて法定利率が5%~3%になったことで、逸失利益として受け取ることができる金額が大幅にアップします。
これは、交通事故の後遺症で収入減を余儀なくされた人にとっては、大きな安心感につながるのではないでしょうか。ここでは、逸失利益について詳しくご紹介しますね。
逸失利益って一体何?交通事故で後遺症が残った時に受け取ることができる利益
逸失利益とは、交通事故で後遺症が残った時に受け取ることができる利益のことです。逸失利益は大きく分類すると以下2つに分類されます。
- 交通事故死亡逸失利益
- 後遺症逸失利益
ここでの逸失利益は、後遺症逸失利益のことに焦点を当てますね。
逸失利益でいくら得られるのかという点は、その人の収入や年齢などによって大きく異なりますが、専業主婦や無職者、学生などでも対象となります。現在、収入を稼いでいないからと言って逸失利益を受け取れないというわけではありません。
自営業の場合だと、確定申告による収入が元になりますし、会社の役員だと、役員報酬などは除いた労働部分の収入が基礎収入となります。
学生とか主婦、無職の人の場合には、賃金センサスというものを使い、もしも働いていたのならどのぐらい稼げるのかという点を元に基礎収入が計算されることになります。
逸失利益の金額を決める要素は他にもたくさんあり、どのぐらいのレベルの後遺症を負ったのかという点、後遺症によって将来稼げるはずだった収入面でどのぐらいの損失を受けたのかという点が検討されることになります。
逸失利益を計算する「ライプニッツ係数」とは民法で決められている利息
逸失利益を計算する際には、いろいろな要素が係数として関係します。その一つであるライプニッツ係数というものは、一言で言うと民法で決められている利息のことですね。
この利息分は、逸失利益として受け取る金額から自動的に天引きされるということになります。
つまり、民法によって決められている利率が高ければ、差し引かれる金額が大きくなるということで、利率が低くなると差し引かれる金額も少なくなり、より多くの逸失利益を受け取れるということになります。
民法改正によって利率が5%~3%に下がったので、これによって逸失利益野受取金額は以前よりもアップすることになりますね。
逸失利益の受け取り年数によって係数は異なり、これが逸失利益の金額を計算する際に使われます。
基本的な逸失利益の計算方式
逸失利益を計算する時には、その人が事故前にどのぐらいの収入を稼いでいたのかという基礎収入の金額だけではなく、事故の後遺症によってどのぐらい収入面で損失を被ったのかという割合を示す労働能力喪失率、どれがどのぐらいの期間になるのかというライプニッツ係数など、様々な要素から計算されることになります。
計算方法は、基礎収入x労働能力喪失率x労働能力喪失期間によるライプニッツ係数で計算することになります。
分かりやすく具体的な数字で説明するために、ここでは定年が65歳の会社で働いていた40歳のサラリーマンが交通事故によって硬めの視力が0.1以下になってしまった場合を見てみましょう。
事故前に年収400万円を稼いでいた彼の場合には、基礎収入は400万円となります。労働能力喪失期間は、事故に遭ったのが40歳で定年まであと25年間あるということなので、25年間ですが、この25という数字がそのまま計算で使えるわけではなく、ライプニッツ係数に基づいた係数を使うことになります。
年数が25年の場合にはライプニッツ係数は14.094となり、逸失利益の計算ではこの数字を使います。
労働能力喪失率ですが、これは病院で診断してもらう必要があり、診断内容に基づいて5%~100%の間で決まることになります。
この労働能力喪失率は自動車損害陪席保障法施工例に基づいていて、要介護1級~第14級までの障害等級によって異なり、要介護1級の場合には、喪失率は100%となりますが、最も軽度の第14級の場合だと、喪失率は5%ということになります。
このサラリーマンの場合には、事故の後遺症として片目の視力が0.1以下になってしまったため、後遺障害等級10級の扱いとなり、喪失率は27%になります。
これを計算すると、このサラリーマンが受け取れる逸失利益は400万円x0.27x14.094となり、1522万円を受け取れることになりますね。
死亡した場合の逸失利益の計算方法
交通事故によって死亡してしまった場合には、残された家族にとっては収入が入ってこなくなってしまいます。交通事故死亡逸失利益では、被害者が亡くなった時点から将来稼げたであろう収入分を計算して補償しています。
計算方法ですが、年間の収入から生活費を差し引いた金額に対して、死亡した年齢~就労可能年齢のライプニッツ係数を割だしてかけるという計算を行います。具体的に分かりやすい例を挙げてご説明しましょう。
例えば、30歳で交通事故に遭い死亡してしまった既婚サラリーマンの場合を考えてみましょう。彼が事故前に年収300万円を稼いでいて、扶養家族は妻と子供で2人いたとしましょう。
彼の基礎収入は300万円となりますが、ここから生活費控除率を差し引くことになります。この控除率は、男性か女性か、独身か既婚か、一家の大黒柱かどうかという点によって異なり、彼の場合だと被扶養者が2人いるので生活費控除率は30%、つまり彼の収入は300万円x(1-0.3)=210万円ですね。
次に、彼が後何年働けていたか、就労可能年齢のライプニッツ係数を割り出すことになります。
67歳まで働けていたとした場合、就労可能年数は37年となり、ライプニッツ係数は16.711となります。210万円にこのライプニッツ係数をかけ合わせると、3509万円と計算され、こちらが死亡時の受け取り逸失利益となります。
民法改正によって逸失利益の何が変わるのか?
逸失利益は、交通事故によって死亡したり後遺症が残った場合に、将来稼げたはずの収入を補償するというものですが、受け取りの際には法定利率による利息が差し引かれることになります。
つまり、法定利率が高ければ、差し引かれる金額が多くなるということになり、法定利率が低くなれば、差し引かれる金額が少なくなるので結果的に手元に入る分が多くなるということになりますね。
民法改正によって法定利率が5%~3%に下がったことは、逸失利益の受取金額が大幅にアップすることにつながります。
現行民法404条で法定利率が年3%の変動制に変わる
現行の民法では、法定利率は年5%と決められています。しかし、民法改正によってこれが大きく変わり、年間3%がデフォルトとなります。
そしてこの3%というのは変動制で、3年ごとに市場動向を見ながら1%ずつという小さな単位で見直すことになります。
特殊な経済的事情の発生や 短期的な金利動向によって突発的に変動を生ずることのないように配慮する必要があ る。そこで、法定利率を一定の指標に連動させるとしても、ある程度緩やかに変動が 生ずることとする必要がある。
この法定利率はいろいろな所で適用されている利率なのですが、損害賠償金を計算する時や、借入金の利息を計算する時などによく使われますし、交通事故の被害者に対する逸失利益を計算する際にも使われています。
逸失利益というのは、分かりやすく言えば、交通事故の被害に遭わなかったら稼げていたであろう収入とその年数を掛け合わせたものですが、就労可能年数を計算する際には、後何年という数字をそのまま使うわけではなく、就労可能年数に対応するライプニッツ係数というものを使います。
そして、このライプニッツ係数に法定金利がつかわれているのです。つまり、法定金利が変わることによって、ライプニッツ係数の計算方法が変わるので係数が変わり、それが逸失利益の計算にも大きく影響が出ることになります。
年3%をスタートとする変動制に変わるメリット
年5%に固定されていた法定金利が、3%をデフォルトにして3年ごとに見直す変動制に変わることによって、被害者やその家族が受け取れる逸失利益の金額が大幅にアップするというメリットが期待できます。
具体的にいくらアップするのかという点は、その人の基礎収入や年齢などによって異なるため、かならずいくらアップするという線引きはできませんが、逸失利益の計算に使われるライプニッツ係数の中で法定金利が使われているため、誰でも確実に受け取れる収入がアップすることになりますね。
そしてこの法定金利は、デフォルトが3%で3年ごとに1%ずつの見直しが行われます。見直しによってさらに1%下がって2%になる可能性もありますから、そうなると受け取れる逸失利益の金額はさらに高くなるでしょう。
もしも見直しによって3%から高くなってしまうとしても、1%ずつの見直しなので、3%からいきなり6%になってしまうことはありません。その点は安心ですね。
逸失利益が上がると保険料へどのような影響があるのか?
逸失利益の計算に使われているライプニッツ係数は、法定金利が下がると係数は大きくなるため、受け取れる逸失利益の金額は高くなります。
これは交通事故の被害者にとっては大きなメリットなのですが、保険料を支払う側にとっては、法定金利が下がることによって毎月の保険料は高くなることが予想されます。
法定金利が下がると、交通事故の被害者が受け取れる逸失利益の金額は高くなります。これは保険会社が支払っているもので、法定金利が下がることによって交通事故の被害者へ支払う支出が増えるのですから、保険会社の経営は必然的に苦しくなってしまうでしょう。
例えば被害者一人あたりに支払う金額が100万円高くなった場合、被害者が1万人いると保険会社の支出は100億円増えてしまいます。これは大きいですよね。
これをどこから解消するかというと、保険料の値上げしかありません。この法定金利の引き下げはどの保険会社にも共通して適用されるものなので、現在どこの保険会社から逸失利益を受け取っていても、法定金利の引き下げによって被害者が受け取れる逸失利益の金額はアップするでしょう。
しかし同時に、どこの保険会社に加入していても、保険料は高くなる可能性が高いことは、あらかじめ念頭に入れておきたいものです。
ただし、いくら保険料が上がるのかについては、保険会社によって異なりますから、保険料の見直しを定期的に行うことは、とても大切なことなのです。
金利の変動制によって法定利率が変わるメリット・デメリット
法定金利が5%の固定金利から3%の変動金利になると、逸失利益などの損害賠償金の受取額が高くなるというメリットがあります。
この変動金利は3%がデフォルトですが、その後3年ごとに1%ずつの見直しが行われるため、3年後には3%が2%とさらに下がる可能性もあれば、4%と少し高くなってしまう可能性もあります。
金利が変動すると、損害賠償の受け取りが高くなるというメリットがある反面、保険料が高くなるというデメリットがあります。
逸失利益の総額は保険会社の出費となるため、保険会社にとっては増えた分をどこか別の所から徴収する必要があり、それが私たちが納めている保険料ということになります。
いつから変動金利の施行が行われるのか?法律改正の流れ
民法の改正案は、数年前から何回も話し合いが行われてきました。一度法律が改正してしまうと、国民の生活を拘束することになるため、国会でも簡単に改正することはできず、たくさんの順序を踏まなければいけません。(参照:内閣法制局「法律の原案作成から法律の公布まで」)
まず最初に、法律案の原案が作成され、内閣法制局という所で審査にかけられた後、閣議決定が行われます。その後でようやく国会で審議が行われるというわけです。審議が行われても確実に通るわけではないため、ここまでくれば安心ということはありません。
ようやく国会の審議に通ると、法律が成立し、国民に対して法律の公布が行われます。逸失利益に大きな影響を及ぼす法定金利の改正については、2018年に民法改正が行われることになっています。
1.法律案の原案作成
法律を改正する際には、まず最初に法律案の原案を作成します。これは各省庁で行われる作業で、省庁内で意見交換や調整作業を繰り返しながら、一つの原案が作られることになります。
法律案の原案作成の作業においては、まったく新しい法律を制定するために行われることもあれば、法定金利のようにすでに存在している既存の法律を改訂するために行われることもあります。
さらには、廃止という方向で検討が行われる法律もあり、どの場合にも最初はこの法律案の原案作成から始まります。
この作業の過程においては、審議会に対する詰問および公聴会を開いて意見の聴収が必要になることがあります。こうした必要な作業はすべて原案作成のプロセスの一つとして行われた後、各省庁が意見をまとめて一つの原案として完成するのです。
2.内閣法制局における審査
法律の原案が作られたら、次に内閣法制局において審査が行われます。これは閣議に付される前の作業で、各省庁が内閣総理大臣あてに提出することもありますし、すでに各省庁で意見がまとまっている案件については、予備審査という形で審査が行われることもあります。
この内閣法制局での審査は、憲法や現行の法律と照らし合わせて法的に妥当なものかどうかという点、立案における意図がきちんと正しく反映されているかという点、その他条文の表現方法とか用語についての誤りなど細かい部分までが詳しくチェックされることになります。
審査に通れば閣議に提出されますが、修正がある場合には、修正作業を行わなければいけません。
3.国会提出のための閣議決定
内閣法制局において法的にも問題がなく、国会に提出しても問題ないと判断された案件は、国会提出の前審査的なプロセスとなる閣議に提出されます。
閣議にかけられて異議なく決定されると、内閣総理大臣からその法律案が衆議院もしくは参議院へと提出されることになります。
この作業は具体的にどこで行っているかというと、内閣官房が内閣提出法律案に関する事務作業を全て請け負っています。
閣議決定のプロセスは、常に満場一致で決定するというわけではなく、衆議院や参議院で異議が出ないように、いわば作戦会議的なものが行われることになりますね。
衆議院や参議院の国会で意義が出てしまうと、そこから先になかなか進まないということは珍しくありません。そのため、すべての議員が納得できるような内容や表現方法などについて、何回も検討討議されるのです。
4.国会における審議
各省庁で合意に達した法律の改正案が国会に提出されると、衆議院および参議院で審査を行うことになります。
そのプロセスですが、まず参議院および衆議院の議長は、適切な委員会に原案を付託して、まずそこで審議が行われることになります。
ここでの審議は、国務大臣による提案理由の説明を行った上で審査が行われますが、質疑応答の形式で進められていきます。ここで審議が終了すると、国会の本会議に場所を場所を移して本審議が行われます。
審議される内容は基本的に同じなのですが、審議をする人が異なるため、しっかりと多くの人の合意をこぎつけたうえで法律の成立および改正にたどり着くことができるのです。
5.法律の成立
衆議院と参議院の両方での本会議で法律の制定および改正について合意を取ることができると、いよいよ法律が正式な形となります。
一つの法律が制定されるまでには、原案を作るところから実際に法律が公布されるまで長い月日がかかってしまうことが多いのですが、どの時点で正式な法律となるかというと、衆議院および参議院の両方で可決したタイミングで、新しい法律が成立したと認識されます。
衆議院および参議院、どちらで最初に合意を取り付けるかはケースバイケースで異なりますが、後から合意に取り付けたほうの議長が内閣を経由して新しい法律を奏上することになります。
6.法律の公布
法律が議会で可決されると、そこで新しい法律が誕生するわけですが、法律制定のプロセスはそこで終わりではありません。その後30日以内に法律が公布されることになります。
法律の公布は、後議院から内閣経由で奏上されてから30日以内と決められていますが、その間に交付するための閣議決定が必要となりますし、官報に新しい法律が制定された旨を掲載するための作業が必要となります。
新しい法律が公布される際には、その法律に法律番号という番号が付けられます。そしてさらに、国務大臣と内閣総理大臣の連署も必要となり、そこで何月何日から実際に施行されるかという発表が行われます。
法律が現実に発効するためには公布が必要
新しい法律は、衆議院と参議院の両議院で可決されれば、その時点で法律の誕生となります。しかし、そこで必要な作業が終了するというわけでもなければ、その時から国民全員にその法律が適用されるというわけでもありません。
議会で制定された法律は、国民に対して交付するという作業が必要となりますし、いつから実際に施行するのかという点を決めなければいけません。
法律が議会で可決されてから、実際に交付するまでには30日以内という日数が決められています。もちろん30日以内に交付できることもあれば、ギリギリ30日になってしまうこともありますが、30日以内に交付されることになります。
そしてこの交付されるところで、具体的にいつから施工をはじめますという点なども国民に通知されるので、各企業などはそこに向けて調整作業に入ることになるのです。
まとめ
民法が改正されたことにって、これまでの法定金利が固定の5%~変動制の3%に引き下げられました。この法定金利はいろいろな場面で使われている金利で、交通事故の被害者に支払われる逸失利益を計算する際にもつい買われています。
法定金利が引き下げられることによって、被害者が受け取れる逸失利益の金額は高くなるというメリットが期待できますが、支払うのは保険会社のため、この増えた支出分をどこかで補わなければ経営が厳しくなってしまいますよね。
どこから補うかというと、それは私達が支払っている毎月の保険料に影響することが懸念されています。
つまり、法定金利が下がることによって、被害者が受け取れる逸失利益がアップするというメリットはあっても、一方で毎月の保険料が低くなってしまうというデメリットが起こってしまうわけですね。
法定金利は法律によって定められているため、今回の5%~3%に引き下げる際にも、長い年月がかかりました。
法定金利の改正だけではなく、すべての法律は、新しく制定したり既存の法律を改正したり、また既存の法律を廃止する場合などすべての場合において、まずは各省庁が原案を作り、いろいろな所で審査を受け、合意に達した上で衆議院および参議院の国会で審議されることになります。
法律となるためには両方の議員で可決されることが必要で、可決された後に国民へ通知するための交付が行われ、そこで何月何日から実際に施行しましょうという日時が決められます。