参考にしたい!交通事故後に健康保険を使う2つの注意点【書類一覧】
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知らない人も多いのですが、交通事故にあった時に、その怪我の治療では原則として、健康保険を使いません。これは交通事故の被害を、請求しやすくするためだからです。ただ、途中から健康保険に切り替えることもできます。
むしろ治療の打ち切りになると、健康保険に切り替えて欲しいと言われるケースが多いでしょう。しかし、本当に切り替えてしまっても大丈夫なのか、と不安に思う人も多いはずです。
そこで、交通事故の被害にあった後の治療は、健康保険を使うべきなのかどうかを解説していきます。怪我の賠償を、しっかり受けられなくなる可能性もありますので、きちんと知識として知っておく必要があります。
被害者でも健康保険を使わないと損する可能性も
原則として健康保険を使いません、とお伝えしていますが、これは使えないとは違います。交通事故の被害にあった時に、健康保険を使うことは可能です。保険を使えば自身が支払いをする場合でも負担を減らせます。
交通事故で過失割合が10対0になることは、滅多にありません。ほとんどのケースで双方に過失があり、その割合によって最終的に被害額を賠償する形になっています。では、怪我の治療費は誰が支払いをするのでしょうか。
示談が成立すれば、最終的に加害者側が加入している保険会社から、治療費や通院費が支払われます。しかし、被害者側が先に立て替えをして、支払いをすませる必要があるのです。
つまり健康保険を使わなければ高額の医療費を立て替える必要があり、治療内容によっては不適切として、支払われないケースもあるので注意しましょう。
被害者が健康保険を使うメリット・デメリット
では、交通事故の被害者が健康保険を使うメリットとデメリットについて、目を向けていきます。メリットは1つ、デメリットは3つを紹介していきましょう。
これらについて詳しく解説をしていきます。実際に事故にあった時には、メリットとデメリットを勘案して利用するといいでしょう。
【メリット1】過失相殺の際に自分の負担額が減る
交通事故において、被害者と加害者はどこで分かれるのかといえば、過失割合で決めることが多いです。過失割合とは、その交通事故がどちらの責任で起こったものか、の割合です。
信号で停止中の車に、追突事故を起こした時などは過失割合が10対0になるでしょう。それ以外では、双方ともに責任を負うことになります。たとえ被害者であってもそれは変わりません。
この時に事故による負傷の治療費は、加害者が全額負担とはならないので注意してください。あくまでも、過失割合に応じた負担分が請求できるだけです。
つまり相手が全額負担するものと考えて、健康保険を使わずに高額な自由診療を受けてしまうと、最悪は自己負担をしなければいけないのです。そのため健康保険を使っておくと、自己負担分を最小限にとどめることができます。
【デメリット1】治療費に上限がある
加害者が任意保険に加入せずに、自賠責保険のみの加入であった場合はどうなるのでしょうか。この場合、被害者は怪我をした治療費分は、自賠責保険から支払われることになります。ただ、自賠責保険は任意保険のように上限なしではないのです。
自賠責保険では傷害について、上限が120万円と決まっています。怪我の治療については、120万円までは保証をしますという形なのです。
つまり、この上限を超えてしまうと、治療費は自己負担をしなくてはいけません。この点を注意しておきましょう。
こちらは被害者なのだから、相手が支払うものだと決めつけていると、自己負担分が大きくなる可能性が高いです。反面で健康保険を使っておくと、治療費が軽減されるので上限におさめやすくなるとも言えるでしょう。
【デメリット2】高額・過剰な診療や治療費は認められない場合も
原則として、交通事故の被害者は加害者に対して、怪我の治療費などを請求できます。ただし、診療や治療が不当に高額となっているケースは、認められないことがあるのです。また、過剰な診療についても同様です。
高額な診療とは、治療費がたくさんかかるものだけではありません。一般的な治療費や診療費に対して、通常よりも遙かに高いものを意味します。さらに怪我が治っているような状況で、受けている治療も過剰診療として認められないのです。
ただ健康保険の範囲内ではなく、自由診療でしか認められていない治療が必要なケースもあります。この場合は病院や保険会社と相談することで、例外的に認められることもあります。
そのため自由診療を提案された時には、まずは相談するようにしてください。
【デメリット3】診療の幅が狭くなる可能性
健康保険を利用することのデメリットに、診療の幅が狭くなるというものがあります。健康保険を使うということは、自由診療にあたる治療を受けられないことになるからです。あくまでも保険診療の範囲でしか、治療を受けられません。
基本的に交通事故の被害にあった場合、健康保険の診療内で治療できる怪我であることがほとんどです。一見すると、デメリットにはなりにくいかもしれません。しかし事故による怪我と一口にいっても、どんな症状がでるかはわかりません。
万が一にでも、複雑な症状や研究が進んでいない分野などの症状が出た場合は、健康保険がきかないケースもあるのです。
そもそも健康保険を使って治療を受ける場合は、保険外の治療方法は病院側が提示しない可能性もあるので、やはりデメリットになるでしょう。
加害者の治療費は健康保険使用はメリットが大きい
では、反対に加害者側が怪我を負った場合を考えてみます。加害者側といっても、10対0になるような事故は珍しいです。大抵の場合は双方ともに責任があるので、自分の治療費を相手側の保険会社に請求することができます。
仮に8対2の過失割合であった場合は、治療費の2割が相手から保証される形です。8割は自己負担になるのですが、健康保険を使うことで、自分自身の負担を減らせます。3割負担となるので、かなり負担を軽減できるでしょう。
ちなみに10対0の過失割合であった場合は、どうなるのでしょうか。このケースでは相手に治療費を請求できません。そのため、健康保険を利用すれば、自身の治療費を最低限の負担ですませることができるのです。相手がいない単独事故の時も同様です。
保険会社から健康保険の使用を促される理由と対応
交通事故の被害にあった場合には、相手の保険会社から健康保険を使ってください、と言われることがあります。先述したように健康保険は交通事故の治療には使えない、と勘違いをしている人も多く、不安に感じてしまうでしょう。
しかし交通事故の治療でも、健康保険を使うことができます。そして相手の保険会社の意図は、治療費を抑えて欲しいということです。保険会社からすれば、自己負担とするよりも損害賠償の額を減らせるので、こう言う話がでるのです。
被害者にとってメリットはない、と思われるかもしれませんが、実はそうでもないのです。
治療費は立て替えをするものですから、治療費を抑えることになる健康保険を使うメリットはあります。ですので、よほど複雑な症状でない限りは、健康保険を使っても問題ありません。
病院から「健康保険は使用不可」と断られる理由
他にも、病院側が断ってくるケースがあります。交通事故の怪我を治療するのなら、健康保険は使用不可とする場合です。この時の病院側としては、治療費を多く請求することを目的としています。
一般的に病院の治療費は点数制になっています。健康保険の場合は、1点10円という風に決められているのですが、保険を使わない自由診療では1点につき何円をとるべきか、定められていないのです。
交通事故の治療で健康保険を使うのは、問題ありません。しかし、こうした言葉を伝えるような病院は、患者の治療を第一ではなく利益を優先していると考えて良いでしょう。
そうした病院で治療をするのは不安になるので、治療先を変えてしまうのがベストではないでしょうか。
治療費に健康保険を使うべき3パターン
交通事故の被害にあった時、その治療に健康保険を使うのはまったく問題がありません。しかし、どの場面なら使っていいのか判断に迷う人も多いでしょう。そこで代表的な3つのパターンを紹介します。
- 【パターン1】自分にも過失がある場合
- 【パターン2】治療費の支払いを打ち切られた場合
- 【パターン3】相手の保険会社が治療費の支払いをしない場合
まず自分にも過失がある場合から考えましょう。相手の保険会社から治療費の支払いを受けると、損害全額で過失相殺をされてしまい、自分の取り分が大きく減ることがあるのです。
次に自由診療で治療をしていても、数ヶ月もすれば相手の保険会社から、治療の打ち切りを提言してくることがあります。この場合は、支払いを再開するのは難しいでしょう。そのため保険診療に切り替えて、後から請求する方が賢いです。
最後に相手の保険会社が、支払いをしないケースがあります。被害者が立て替えをして支払いをするパターンですが、この場合ですと治療費が膨大な額になる可能性が高いでしょう。
そこで自身が支払える範囲におさめるために、健康保険を使っておくべきです。この3つのパターンは覚えておくのを、お勧めします。
健康保険を絶対に利用できないケース
健康保険を使って交通事故被害の治療をするパターンとは逆に、保険が使えないケースもあるのです。これは健康保険の給付対象ではないパターンになります。
- 【ケース1】「業務上起こってしまった災害
- 【ケース2】法令違反によって負傷したもの
- 【ケース3】第三者の行為による負傷
最初の業務上起こった災害とは、端的にお伝えすると仕事中に起こった事故などです。トラックやタクシーの運転手が事故をした場合だと考えてください。この場合は健康保険ではなく、労災保険で対応することになります。
次に法令違反によっての負傷ですが、こちらも難しくはありません。無免許での運転や飲酒運転などの結果、負傷をしてしまったというケースが該当します。
ちなみにこれらは任意保険でも免責事項となっているので、注意しておきましょう。
最後の第三者の行為による負傷は、事件や事故で誰かに負傷を負わされたというケースが該当します。交通事故は、この項目に該当するのではと考えても不思議ではありません。
この点については、旧厚生省が自動車による保険事故も、一般の保険事故と変わりがない、保険の給付対象であると発表をしていますので、安心してください。
交通事故の治療費で健康保険を使用する注意点
交通事故の治療費で、健康保険を使うメリットはあります。しかし反対に、いくつか注意すべきポイントもあるのです。代表的なものが、途中で治療費の打ち切りをされるケースでしょう。この場合の対処法として、健康保険に切り替えることも可能です。
ただ、一方的に打ち切り通告がされたのではなく、提示された場合は別の対処法もあります。その方法は治療をしている担当医師に、意見書を書いてもらう方法です。原則として治療の打ち切りは、保険会社、被害者、医師の合意があって成立するものです。
そのため医師に相談をして、まだ治療が必要であることを意見書として書いてもらうのです。内容としては、治療があとどのくらい必要なのかといったものになります。
現在までの治療でどの程度治り、あと何ヶ月かの治療が必要などのように、具体的に提示してもらうのです。この意見書を元に交渉することで、治療費の支払いが継続されるのも少なくありません。
交通事故で途中から健康保険に切り替えは可能
問題となるのは一方的に打ち切りをしてきた場合です。このケースでは再交渉をしても、治療費の支払いが再開されることはほぼありません。従って、素直に健康保険に切り替えた方がいいでしょう。
途中から支払いを健康保険に切り替える場合は、自分が加入している保険組合に連絡をする必要があります。この時に、第三者の行為による傷病届を提出しなくてはいけません。この書類に不備がなければ、健康保険を利用して治療を継続できるのです。
この時に注意したいのが病院の対応でしょう。途中から健康保険に切り替えるとなると、嫌がる病院も少なくありません。
しかし、厚生省が認めている権利なので健康保険が使えない理由はないのです。そこで交渉をするか、保険が使える病院に変えるかをするのがベストでしょう。
使用する際の手続きの流れと必要書類
では、実際に交通事故の被害を治療する際に、健康保険を使う時の流れや、必要書類について解説をしていきましょう。まず相手がいる場合の大まかな流れを解説します。
- 第三者行為による傷病届を提出する
- 健康保険の場合は管轄の協会けんぽ
- 国民健康保険の場合は国保の窓口
となります。相手がいない単独事故の場合も基本的な流れは同じです。必要となる書類もまとめておきましょう。
- 第三者行為による傷病届
- 事故の発生状況報告書
- 誓約書
- 念書
これらの書類が一般的です。他に添付書類もあります。
- 事故証明書
- 戸籍謄本か死亡診断書
- 示談している場合は示談書
では、必要書類について解説をしていきましょう。第三者行為による傷病届は、協会けんぽのウェブサイトからダウンロードが可能です。この書類に被保険者の記号番号や氏名などを記入しましょう。他に加害者の氏名や住所なども記入してください。
事故の発生状況報告書については、交通事故の場合のみ必要となってくるものです。ただ、別途用意するのではなく、第三者行為による傷病届と一式になったものがあるので、そちらを利用しましょう。
事故証明については警察に届け出をしていると、入手できます。念書や誓約書についても同様で、第三者行為による傷病届と一式になった様式があるので、その用紙を利用してください。
示談書は、既に示談が成立している場合のみ必要です。示談がまだ成立していない場合は必要ありません。
通院は症状固定まで継続することが大切
交通事故の怪我を治療するとしても、様々なケースが存在することがわかりました。ただ重要なポイントは、しっかりと怪我は治療をすべきという点です。手続きが面倒だからと治療費の打ち切りにあわせて、治療をやめる人も少なくありません。
また安易に示談をしたことで、まだ治療が継続中であるにも関わらず、自腹での支払いになるケースもあるでしょう。この場合、被害を受けたのに損害をしっかりと賠償してもらえないのです。
きっちりと賠償をしてもらうには、どのような手段を使ってでも病状固定まで継続するのが大切です。
病状固定とは治療をしても、良くも悪くもならない状態を指します。むち打ち症などで多いケースですが、できるだけ賠償をしてもらうには必要なことでしょう。
まとめ
交通事故にあってしまった場合、その治療には健康保険を使うべきかどうかを、お伝えしてきました。結論としては、多少のデメリットはあっても、健康保険を使うことに大きなデメリットはないということです。
一般的なイメージから、怪我の治療には健康保険を使えないと考える人も少なくありません。しかし、大抵の事故の場合は健康保険を使う方が、メリットが大きいと言えます。被害者側だけではなく、加害者側にとっても同じことが言えるでしょう。
特に自己負担分を減らせるのが、大きなポイントです。健康保険を使わない場合は、どうしても治療費がかさんでしまいますので、その点も十分に考慮しておきましょう。
病院側に断られる可能性はありますが、そうした病院で治療する必要もありませんので、妥協はしないようにしてください。