飲酒運転(酒気帯び運転)で捕まったら…罰金・罰則や保険適用の有無
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警察庁によれば、飲酒運転での事故は飲酒なしの事故に比べると、死亡事故率が約8.3倍も高いというデータが出ているそうです。
厳罰化や取締りの強化により飲酒運転による交通事故は年々減っていますが、もちろん完全になくなったわけではなく依然危険な事故は起き続けています。
もし飲酒運転をして捕まったらどうなるのか?今回、飲酒運転(酒気帯び運転)に対する処罰について解説したいと思います。
飲酒運転と酒気帯び運転の違いは?
一般的な意味での「飲酒運転」は道路交通法で2種類に分けられています。一つがよく耳にする「酒気帯び運転」、もう一つが「酒酔い運転」というものです。
「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の違い
違反名 | 基準 |
---|---|
酒気帯び運転 | 1.呼気中アルコール濃度1リットルあたり0.15mg以上、0.25mg未満の場合 2.呼気中アルコール濃度1リットルあたり0.25mg以上の場合 |
酒酔い運転 | アルコールの影響により正常な運転ができない状態の場合 ※アルコール濃度の高さは関係ない |
飲酒検問を受けた方ならご存知の通り、アルコール検知器に息を吹きかけることでアルコール量が分かります。
当然のことですが酒に強くビール10杯飲もうが正常な運転ができる人でも、体内のアルコール量が基準となりますので、呼気中アルコール濃度1リットルあたり0.15mg以上であれば「酒気帯び運転」です。
また、0.25mg以上になればより危険な状態であるので「行政処分と罰則」が重くなります。これについてはあとで詳しく解説します。
「0.15mg未満」であれば酒気帯び運転で捕まらない?
呼気中アルコール濃度1リットルあたり0.15mg以上から酒気帯び運転ということは、0.15mg未満であれば処罰されないのか?
例えば0.10㎎と計測された場合。これだけでお酒を飲んだ事実は判明しますが、しかし違反の基準通り、0.15mg以上ではないので処罰されることはありません。
もちろん、だからといって良いわけではありませんし、アルコール量が少なくても危険運転で事故を起こす可能性があります。そのため「酒酔い運転」という違反基準も設けられています。
「酒酔い運転」はアルコール濃度は関係ない
酒酔い運転は「アルコールの影響により正常な運転ができない状態の場合」の違反行為です。飲酒量と酔った正常でない状態は必ずしも比例関係にはありません。ごく少量の飲酒でも酒に酔って意識がもうろうとしてしまう人もいます。
そのためアルコール量に関係なく、アルコールによって正常な運転ができないと判断されたときには「酒酔い運転」となります。
つまり、先に説明した「0.15mg未満」のアルコール量であっても、まっすぐ歩けなかったり、明らかに注意力や意識が鈍っているような反応をした場合にはこれに当てはまります。
そしてあとで解説しますが「酒気帯び運転」よりも「酒酔い運転」の方が処罰が重くなります。
どれくらい飲酒すれば酒気帯び運転?
どれくらい飲めば「呼気中アルコール濃度1リットルあたり0.15mg以上」になるのか?
計算がややこしいので簡単に説明しますが、0.15mgという「呼気中アルコール濃度」を血液中の濃度である「血中アルコール濃度」に換算します。
そうすると「1ミリリットルあたり0.3㎎」の血中アルコール濃度となり、これは「ビール中びん1本」や「日本酒1合」や「ウイスキーダブル1杯」を飲んだときにおおよそ相当します。
アルコールが抜ける時間は?
お酒を飲んだあとしばらく時間をあけて車を運転したのち酒気帯び運転で捕まったというケースもあります。
体重約60kgの成人男性で、1単位(ビール中びん1本、日本酒1合、焼酎0.6合)のアルコールが体内から消えるまでに約3~4時間かかります。2単位では、約6~7時間、3単位では、約9~10時間、4単位では、約12~13時間かかります(これは、あくまで目安です。体格、体質、性別で異なります)。
何時間経ったら絶対にアルコールが抜ける、というわけではないので注意しましょう。
繰り返しになりますが、違反の基準はあくまでもアルコール量です。アルコールの代謝は待つしかないので、頭がしっかりしてるから問題ないといった判断では乗らないようにしましょう。
酒気帯び運転・酒酔い運転の行政処分(点数・免許処分)と罰則(罰金・懲役刑)
ここでは飲酒運転(酒気帯び運転・酒酔い運転)の「行政処分と罰則」について見ていきましょう。
酒気帯び運転は「免許停止」か「免許取り消し」
酒気帯び運転の基準 | 点数と免許処分 |
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0.15mg以上~0.25mg未満 | ・基礎点数:13点 ・免許停止、期間90日 |
0.25mg以上 | ・基礎点数:25点 ・免許取消し、欠格期間2年 |
まず酒気帯び運転の行政処分ですが、当然、アルコール量が多いほど処罰は重くなります。
表にある「欠格期間」とは運転免許が取り消された場合の、運転免許を再取得できない期間です。つまり、「0.25mg以上」の場合、免許が取り消されてから2年間は新たに免許の取得はできません。
「0.15mg以上~0.25mg未満」の免許停止、期間90日という処分は「前歴及びその他の累積点数がない場合」になります。前歴がある場合、免許停止ではなく免許取り消しとなります。
酒気帯び運転の刑事処分(運転者・車両提供者・酒類提供者または同乗者)
対象者 | 酒気帯び運転の罰則 |
---|---|
運転者 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
車両の提供者 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
酒の提供者または同乗者 | 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
酒を飲んで運転した者だけでなく、車を提供した者も「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となります。
また、一緒に乗っていた者や酒をドライバーに提供した者については少しだけ軽く「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」と定められています。
酒酔い運転は「免許取り消し」
酒酔い運転の基準 | 点数と免許処分 |
---|---|
アルコール濃度に関係なく、アルコールの影響で正常な運転ができない状態 | ・基礎点数:35点 ・免許取消し、欠格期間3年 |
酒気帯び運転と比べて危険な状態で運転しているため、罪も重くなります。もう一度「酒気帯び運転」の処分を挙げて比較してみると、
- 0.15mg以上~0.25mg未満:「基礎点数:13点、免許停止、期間90日」
- 0.25mg以上:「基礎点数:25点、免許取消し、欠格期間2年」
このように酒酔い運転の方が点数は35点と厳しく、免許取消し、欠格期間も3年の長さです。
酒酔い運転についても、この処分は「前歴及びその他の累積点数がない場合」となります。
酒酔い運転の刑事処分(運転者・車両提供者・酒類提供者または同乗者)
対象者 | 酒酔い運転の罰則 |
---|---|
運転者 | 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
車両の提供者 | 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
酒の提供者または同乗者 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
こちらも比較してみると酒気帯び運転は以下のように通りでした。
- 運転者:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 車両の提供者:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 酒の提供者または同乗者:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
刑事処分についても酒気帯び運転よりも重たいものとなります。
飲酒運転の初犯は罰金?再犯は実刑?
基本的に初犯であればいきなり刑務所に入ることはありません。ただ初犯であっても、人身事故を起こして、誰かをケガさせたり死亡させたりした場合には処分のされ方も当然違ってきます。そうでなければ罰金刑や執行猶予が一般的だといえます。
酒気帯び運転で事故「ケガ・死亡」させた時の処罰は?
先に紹介した行政処分と罰則は、酒気帯び運転と酒酔い運転という違反行為に対する処分のされ方です。これだけでなく、交通事故を起こして人を死亡させるなどした場合にはもちろん厳しく処罰されます。
飲酒運転の交通事故による「危険運転致死傷罪」の量刑
危険運転致死傷罪とは危険な状態で車を運転した結果、人を死傷させた場合に科される刑罰です。飲酒運転をして正常な運転ができない状態で死傷事故を起こした場合にもこの罪となります。
- 「負傷」:15年以下の懲役
- 「死亡」:1年以上の有期懲役
怪我をさせた場合でも、罰金刑などはなく「15年以下の懲役刑」のみと定めた重い罰則となっています。
死亡については1年以上の有期懲役となっており、この「有期懲役」とは最大20年の懲役のことです。
飲酒運転による「ひき逃げ」などならさらに罪は重くなる
酒を飲んで交通事故を起こした際、飲酒運転が発覚するのをおそれ、ひき逃げしたというニュースをよく見かけます。
飲酒運転によるひき逃げでどういう罪に問われるかは状況によって異なりますが、飲酒運転で人を死傷させた場合には先の「危険運転致死傷罪」となります。
ひき逃げはあまりに悪質な場合には殺人罪になることもあります。また、交通事故の際、負傷者の救護をしなかっただけでも「負傷者の救護と危険防止の措置違反」となり、10年以下の懲役及び100万円以下の罰金となります。
刑罰は単純に加算されるわけではない
ちなみに日本の場合、複数の罪を犯した時には、そのすべての刑罰を加算していくものではありません。すべての罪で定められた刑の長期(「〇〇年以下」の部分)の合計を超えることがないようになっています。
2個以上の罪によって有期懲役・禁錮に処するときは、そのなかで最も重い罪の刑の長期を1.5倍したものを長期とすることになっています。
例えば飲酒運転の死亡事故が起こり、「危険運転致死傷罪」が最も重い罪の場合、その処分内容は「最大20年の懲役」でしたから、20年×1.5倍で最大30年が長期の上限となります。
飲酒運転による交通事故は自動車保険はおりない
基本的に飲酒運転での交通事故の場合、自動車保険は使えません。補償を受けられないので自己負担しなくてはなりません。
ただ、被害者側の損害については補償されます。つまり「自賠責保険」「対人賠償保険」「対物賠償保険」については適用されます。