無免許運転の交通事故だと自動車保険はどうなる?補償の違いを解説
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無免許運転の交通事故は毎年決して少なくありません。警察庁の資料によれば、平成29年の無免許運転による交通違反取締り件数は2万620件です。これは酒酔い・酒気帯び運転の2万7,195件、整備不良車運転の2万6,499件と近い数になります。
もし無免許運転の車によって事故の被害に遭った場合、自動車保険の補償はどうなるのでしょうか?本来なら車に乗っているはずのない運転者との事故ですから、補償のされ方が気になるところです。
また反対に、被害者側ではなく、自身が無免許運転をして事故を起こしてしまったら?あるいは無免許運転の車に同乗していたら?
一口に無免許運転の事故といっても様々なケース、複数の立場があります。そこで今からケース別に無免許運転事故における自動車保険の補償の違いについて解説したいと思います。
そもそも「無免許運転」とは?どんな種類があるの?
無免許運転での自動車保険について解説する前に、まずは無免許運転について確認しておきましょう。
無免許運転とは誰もが知っての通り、免許を持たずに運転する違反行為です。無免許運転の種類は4種類あり、以下の通りです。
今からこの4つについて簡単に見ておきましょう。
1.純無免
純無免とは、運転免許証の交付を受けたことのない者が運転をする場合をいいます。
例えば中学生が車を運転して事故を起こしたというニュースなどをたまに見かけますが、そのケースは純無免にあたります。そのほか、仮免許中の場合にも練習以外の目的で運転した場合は無免許運転になります。
2.取り消し無免
取り消し無免とは、運転免許を取り消された後に運転する場合をいいます。免許を取り消されて完全に運転資格を失うわけですから、交通違反による最も厳しい行政処分です。
詳細な説明は省略しますが、交通違反を重ねて点数の程度が大きい場合に取り消されます。また、運転に支障を及ぼすおそれのある病気が判明した場合などでも取り消しになります。
そうなると公安委員会が決めた欠格期間が終わるまでは新たに免許を取ることはできません。欠格期間は最短で1年、最長で10年です。また、免許を取得する前には取消処分違反者講習を受けなければなりません。
運転能力があるのに車に乗れない状態を長期間過ごすことになるため、ちょっとくらいなら…と思って交通違反を犯すようなケースが多いのでしょう。
3.停止中無免
停止中無免とは、運転免許が停止している期間の運転や、免許の有効期限切れ中の運転などをいいます。
2の取り消し無免と同じように免停中に運転してしまうのは故意ですが、免許の有効期限切れ中の無免許運転に関しては、本人が知らなかったというケースもあります。免許の更新日に気づかず失効となっていた、というような状況です。
更新忘れは無免許運転にならない場合も
運転免許の更新日に気づかなかった場合には、無免許運転という扱いでなく、うっかり失効という扱いになる可能性もあります。
ただし、免許更新日は免許証にも記載されており、通知も届くので、期限切れからあまりに長く経っていると無免許運転になる可能性もあります。
4.免許外運転
免許外運転とは、所有する免許とは異なる車両を運転する場合をいいます。
例えば普通自動車の免許でバスを運転するなどのケースですが、これと似ているものに「免許条件違反」というのがあります。
免許条件違反と無免許違反は別物
免許条件違反とは例えば「AT限定」の免許しかないのにマニュアルを運転した場合や、免許証の「中型車は中型車(8t)に限る」という条件を守らなかった場合などです。
これらは無免許運転には含まれません。
運転中に免許証を所持してなかった場合には?
車の運転の際、免許証を自宅に忘れることなどあるかと思いますが、免許証を所持しなかった場合には無免許運転にはなりません。これは免許不携帯といいます。
もちろん交通違反ではあるため、3000円の反則金を支払わなければなりません。ただし減点にはなりません。
同乗者も罪に問われる場合も
もし同乗者が、無免許運転だと知っていた場合には無免許ドライバーとともに罪になります。同じく、無免許の人に対して、所有する車を貸した場合なども刑罰の対象です。
このあと同乗者に対する自動車保険の補償について解説しますが、同乗者が無免許運転だと分かっていたかどうかは罪ばかりでなく保険の補償でもポイントになってきます。
無免許事故の過失割合は?
過失割合とは、その人に交通事故が起きたことの責任がどれくらいあるかという割合のことです。一般的に交通事故は、片方だけに全面的な責任があるというものではなく、7対3や8対2など両者の責任から事故が生じたとされることがほとんどです。
とはいえ、近年問題となっている逆走事故などでは10対0で逆走車に全責任が問われるようなケースもあります。無免許運転の場合にもその当事者の過失はかなり大きいため、過失割合は片方に傾くことが多いですが、それでも必ず10対0になるかといわれれば状況次第です。
逆走事故のように明らかに一方的に過失があるものでも、例えば被害者側が事故を回避する対応をしなかったせいで事故が生じた時には、過失割合のバランスも変わる可能性があり、これは無免許運転の事故でも同様です。
とはいえ、無免許運転者の過失はかなり重いものであるという事実はいかなる事故状況でも変わりません。
【無免許運転事故の立場別】自動車保険の補償
無免許運転事故が起きたとき、自動車保険の補償はどうなるのか?加害者、同乗者、被害者それぞれの立場から見てみましょう。
1.「加害者側」無免許運転の事故による自動車保険の補償は?
無免許運転の加害者は自分自身に関する補償は受けられません。しかし、例外的なケースもあります。先に、無免許事故の過失割合は必ず10対0になるわけでもないと説明しました。
事故が発生した原因が無免許によるとは限らず、被害者側の運転によって事故が起きてしまった場合などもあります。極端な例でいえば、完全に停止している無免許運転の車に相手が突っ込んできたといったケースです。
これだと免許を持っている相手側に事故の大きな責任があるでしょう。こういうケースでは相手の加入する自動車保険で無免許側の損害、ケガや車の破損などに対する賠償がされます。
2.「同乗者」無免許運転の事故による自動車保険の補償は?
無免許運転者の車に一緒に乗っていた同乗者は事故でケガをした場合、基本的には自動車保険の対象となります。運転者もしくは自身の保険である「自賠責保険、対人賠償保険、人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険」などから補償されます。
無免許運転で自動車保険がおりない・使えないケース
しかし、もし同乗者が運転する者が無免許だと知っていた場合には話が変わってきます。
この場合は飲酒運転の同乗者と同じように、無免許運転ほう助罪として処罰の対象になります。このとき、同乗者も無免許運転者のように補償が受けられなかったり、よくて補償の減額といったことになる可能性があります。
3.「被害者側」無免許運転の事故による自動車保険の補償は?
被害者になった場合、相手が無免許であっても補償されます。無免許者の自賠責保険、対人賠償保険などの補償が適用されます。また、車についても対物賠償保険を受けられます。
ちなみに無免許者が支払い能力のない未成年者であっても、年齢に関わらず妥当な保険金、賠償金を求めることができます。
【交通事故ケース別】無免許運転事故
最後に、無免許運転の事故状況についてに交通事故のケース別で無免許運転にまつわる情報をご紹介しておきます。
無免許運転「死亡事故」について
無免許運転の事故リスクは一般的な交通事故と比べても高いというデータが出ています。例えば平成23年の様々な交通事故全体での死亡率が事故件数の0.6%に対して、無免許事故の場合、事故発生件数の2.5%で死亡しています。
また、重傷の割合についても交通事故全体では6.4%であるのに対して、無免許事故では15.2%という数値です。これは無免許運転がかなり危険な運転をしていることが分かるデータです。
事故の起こる直前の規制速度を超えていた割合についても、「時速30㎞以下」でスピードオーバーしていた無免許者は免許取得者の約2.5倍の数がおり、「時速30㎞~60㎞」では無免許者が免許所得者の約2.6倍、「時速60㎞超」だったのが無免許者は免許取得者の約1.6倍の割合だそうです。
無免許者は交通ルールを逸脱した運転をしているケースが多く、死亡事故の発生率が高いようです。
無免許運転「人身事故」について
無免許運転は死亡事故と同じく人身事故についても交通事故全体と比べて高い事故率というデータが出ています。2015年の少し古いデータですが、大阪は無免許運転の人身事故発生件数で12年連続で全国ワースト1という記事がありました。
2014年の一年間で大阪での無免許人身事故が189件。無免許の摘発自体となれば1909件という数だっだそうです。なんでも常習者が存在しているそうで、無免許運転の取り締まりに特化したチームを開設と書いてありました。
こわいのは、無免許事故の発生時間帯が「朝から夕方にかけて」が目立って多いという結果が出ていることです。通勤や子どもの通学、外出など、日中の活発に行動する時間帯に平気で無免許で運転する人が多いということなので、おそろしいとしかいいようがありません。
無免許運転「物損事故」について
物損事故はまだ人でない分マシだというわけでもありません。
これは運転免許を持っている人にも共通していえますが、壊してしまったものが高価なもので、数億円の賠償を求められたという事例も現実にあります。
無免許運転「飲酒事故」について
飲酒をした状態で無免許運転をしているケースも多いです。無免許で飲酒事故を起こした割合は、免許があって飲酒事故を起こした数の約12倍というデータが出ています。
事故の状況によっては同乗者がいる場合も多いのかもしれません。例えばお酒を飲みに行き、免許保有者がかなり酔っているため、無免許者に運転を任せたといったケースです。
すべての無免許事故にいえることですが「車の操作は免許がなくても簡単にできる」という意識が働いて、本人が積極的に、あるいは周囲に唆されるように無免許運転をしてしまう状況が多いのかもしれません。
無免許運転「未成年者による事故」について
未成年者が無免許運転で事故を起こし、加害者とその両親に2億円以上の賠償金が認定されたという記事がありましたが、もちろんこのように未成年による事故だからといって、賠償額が低く済むということはありません。
少年法によって処罰されますが、悪質なケースでは成人と同じような処罰が下されるそうです。
未成年者は車に乗りたいという好奇心も強い年頃でしょうし、喫煙や飲酒のような不良行為の一つとして車に乗ってしまう状況もあるのでしょうが、とりかえしのつかない被害を与えたあとでは「遊び」ではすみません。
まとめ
事故の際、加害者、同乗者、被害者という立場によって補償のされ方は異なりますし、事故状況によっても補償の可否や程度も違ってきます。